道徳の授業嫌いだったな

動物園に行った。

山の向こうにある小さな動物園だった。

しかし動物の種類は思っていたより多かった。

手作り感溢れる門をくぐり、手作り感溢れる施設を見て回った。

雨が降っていたので屋外に出ている動物は少なかったが、それでも普段からお客さんに餌付けされ慣れているのであろうブタやヤギ、ヒツジは寄ってきてくれた。


色々見終わって動物園の外に「こっちに猿がいます」的な看板があるのを見つけた。

なんだろうと思って行ってみると、動物園によくある猿山的なのが無料で入れる形の施設があった。場所ばれしそう。いいけど。

ボスっぽいやつが山のてっぺんにいて、取り巻きが20匹ぐらいか。まだ生まれて何ヶ月かぐらいの小猿もいた。

(金取ってもよくね?)と思いながら見ていると「ホワァーァーァー」とずっと同じ鳴き声を上げている猿がいるのに気づいた。

そいつは猿山から離れて外壁の下にひとりぽつんと座っていた。

他の猿が飛び回ったり、アスレチックなロープを揺らして遊んだりしている中、そいつだけは座り込んで鳴き声をあげ、しかしそれ以上行動は起こさない。

ひとりぼっち、という言葉が的確だった。

雨が目に染みそうになる。


目の前を他の猿が通り過ぎても手を出さずじっとしている。

遠慮しているのだろうか。

小猿が鳴いた。すると、するするっと母親らしき猿が子猿を抱き上げた。

しかしそいつの体躯はまあまあある。

子猿ではない。

なんだよちくしょう、なんだよお前は。

何十匹もいるなか、そいつだけを見てしまう。


他の猿が外周をぐるぐる暇そうに歩く。

そいつはそれを黙って見過ごしていた。

しかし、そのうちふいに、そいつが歩き始めた。

他の猿の後ろをついて。

するとあることに気づいた。

左の後ろ足を地面に着いて歩いていない。

怪我なのか、生まれつきなのか。

目の前を歩く小猿のスピードに追いついていない。


そういうことか。

猿は猿同士、何かしらあるのか。

人間だって何かしらは、ある。

ないない言いながらある。

何かあるだろう。

細かい話をするとややこしいのでしないが。

しません。


なんとなくその猿を目で追う。

大変だなあとか、これが普通なのかとか、野生ってなんだろうとか。

頭の中がぐるぐる回る。

その猿もぐるぐる回っていた。

そして目と猿がぐるぐる回っているうちに気づいた。

いつの間にか左の後ろ足を地面に着いて歩いていた。

「歩けるのかよ!!!!!!!」

普通に声出た。

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