来年の事を鬼が笑う時代は終わったのではないか

家族で豆まきをした。

僕は子供の作った鬼の面をつけて鬼役をした。

子供の成長なので喜ばしいことだが、投げる力が年々強くなってきている。

まあまあ着込んではいたが、豆が当たった感触が分かった。


保育園にも鬼が来たらしい。

クラスのみんなで作戦を立てて鬼を退治したと言う。

夢もクソもないが、鬼役をやった保育士さん(か、保護者)はえらく怖かったのではないかと思う。

20人ぐらいに取り囲まれ、四方八方から力いっぱい豆を投げつけられる。

中には力の強い子もいるであろう。

地肌が露出している部分に当たったら、自分なら飛び上がると思う。

もし本格的なタイツでのコスプレならほぼ防御力はないだろう。


豆を投げつけられた鬼はどこに行くのか。

「聖☆おにいさん」というギャグ漫画がある。

主人公のブッダとイエスキリストが、働きづめだった天界での仕事の合間、長期休暇として東京で暮らす様子を描いたものである。

その中で節分の話があるが、商売敵?である悪魔(ルシファー)が豆で追い出され凹んでいる鬼たちを集めて、

「体動かして、元気出そうぜ!」とフットサルを始める。

集まった鬼たちは生き生きした表情を見せる。という話。

なるほど、それぐらいのフォローがあれば、鬼も「よぉし、来年も頑張るかぁ!」と思えるかもしれない。

すごい忙しい仕事のあとのビールみたいな。飴と鞭。


子供からすると、鬼は悪い存在、豆を投げつけられて当然かもしれないが、

我々大人からすると、そう単純な話ではないのではないか。

鬼の中にだって人間関係があるだろう。

先輩鬼、後輩鬼で民家へ向かう。


「お前先入れよ!」

「ええ!自分最初っすか!?」

「新人だろ!さっさと行け!そういうもんだ!」


閻魔大王に後輩鬼が「すみません、赤鬼さんの班から外して貰えませんか?」という相談をするかもしれない。

閻魔大王が赤鬼を呑みに誘う。


「今日な、あの新人の青鬼から、お前の班から外して欲しいって言われてな」

「え…あいつ」

「あいつ、こういう飲み会に誘っても来ないし、変に我が強いっつうか。まあ最近の若者、時代の流れってやつかな」

「……」

「お前のやり方が間違ってるとは思わない。俺だってそうやってきたんだから。でもな、今までのようなやり方だと、もう下はついて来ないかもしれないな」

「……」

「あいつはあいつで仕事自体はしっかりやってるし、俺たちの考え方が古くなっちまったんだろうな」

「,,,そうっすかね」

「まあ大変かもしらんけど、俺もなるべくフォローするし、これからもよろしく」

「…っす」


そして二人は静かに酒をあおる。

その酒は奇しくも「鬼ごろし」。

今、ひとつの時代が終わったのかもしれない。

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